シューベルトを歌う保育園

今回の「みんなの記事~ひだまり保育園ってここが面白い*変わってる笑」

を書いてくれたのは

週に1回~3回 長い間パート勤務をしてくれている

みずほちゃんです。

彼女は、元々登山ガイドをしていて

そんなこんなでひだまりを見つけてくれ、

そして12年前からは、

年長クラスの登山を全面的に支えてくれている人。

そして、ピアノがとっても好きなんだって。

そんなみずほちゃんが 

ひだまりの「山」ではなく「音楽」について書いてくれました。

では、どうぞ~




2009年の年も暮れるころ、

私は初めてひだまり保育園の敷居をまたいだ。


初日のひだまり保育園は

何もかもが心を震わせるものばかりだったけれど、

中でも印象的だったのは

こどもたちが口ずさんでいた「歌」だ。


歌っていたのは「十二月の歌」(林光作曲)。


「もえろ、もえろ、あざやかに、夏はカッカと照るだろう~」

という出だしのこの歌は、

深々と冷える泥んこの庭に作られた

明るい焚火を前にしてこどもたちに元気に歌われていた。 


 今でこそ私はこの歌の題名を知っているけれど、

ひだまり保育園で出会う歌は

私自身がこども時代過ごしてきた

幼稚園や学校生活では一度も耳にしたことのないものだった。


知らないものばかりだったが、

どれも美しく充実していて楽しい。


 私はこの日から

「音楽って楽しいものなんだ」

「歌うって楽しくって、生活の中にあるものなんだ」

と思えるようになり、

たぶん生まれて初めて音楽をする喜びと音楽への愛を自覚するようになった。


 知らない音楽ばかりだったと前述したけれど、

実は知っている音楽もあった。

シューベルトやモーツァルト、ワーグナーやウェーバー、ヨハン・シュトラウスらだ。


シューベルトの「ます」や「野ばら」は、

小学校の音楽室でなじみがあったが、

シューベルトの音楽って

なんだか全体的にスカスカしていてぱっとしないなあ

(ごめんなさい…)、

って言うのが私のそれまでの感想で、

どちらかというとあまり好きな歌ではなかった。


ところが、

ひだまりで歌うシューベルトは

本当に美しく伸びやかでドラマティック、

なによりも

「歌いやすい」。


シューベルトが

歌曲王だと称えられてきた所以を

私はこの小さな保育園で初めて実感した。


 同じシューベルトなのに

何がこんなに違うのか。


 ひとつは

歌がこどもたちの生活と結びついているからだろうと思う

(例えば“ます”が冬のさなかに渡されることはないと思う)。


そして、

渡される音楽にも妥協がない。

その道の専門家たちが

本気で作った質の高い音楽を、

その本気を受け取った大人たちが愛し、

本気で勉強して、

そしてその「良さ」を

こどもたちに「ここだ!」というタイミングで渡している。


ひだまりでは

絶妙なタイミングで絶妙な楽曲を渡しているよなあと思う。


 それが出来るのは、

日々の生活をこどもたちと過ごす中で

こどもたちの姿をしっかり観察しているからこそだろうし、

音楽についても

こどもだましではない本気の音楽を

日々研鑽しているからこそなんだろうと思う。


というか、これは

「こどもだからこれくらいの歌で」 という姿勢ではない、

ということではないだろうかと書きながら思った。 


 「この世に参加してきた新しい仲間たちに、

 私たち人類が作ってきた中でも

 より良質な文化を手渡したい。」

 そのように私たち大人が思う時、


シューベルトもモーツァルトも

保育園でこどもたちに楽しく愛でられる。


モーツァルト「魔笛」のアリアを

“この世の地獄~♪この世の地獄~♪”と、

まだ言葉のおぼつかない乳児たちでさえ

誇らしそうに歌う世界が広がるのだ。 



 歌が何気ない生活の中にある人生は豊かだ。

音楽は私たちの生活を助けてくれる。

ひだまり保育園ではそんな生活が約束されている。



まじめなみずほちゃんらしい文章だなあと

思う一方で

こんな風に書いてもらって 身が引き締まる思いです。


いま こどもたちと歌っているのは

こんな曲たち

>「恋する喜びはみんなのもの」モーッアルト作曲オペラ「魔笛」からモノスタトスのアリア

>「かわいいシュゾン」林光作曲 モーッアルト「フィガロの結婚」劇中挿入歌

>「わたしのすきなこなひきさん」谷川俊太郎 詩 林光曲

>「うりつくり」催馬楽より 丸山亜季曲

>「ボビー・シャフトー船出した」マザーグース曲

>「35億年のサーカス」林光曲

>「いずみのみず」萩京子曲

>「夏の樹」林光曲

>「ほたる~じんじん」丸山亜季

>「ぼくがつきをみると」林光曲

>「あまのがわ」林光曲

>「妖精たちの歌」シェイクスピア オペラ「夏の夜の夢」から

>「へいきなうた なつ」工藤吉郎曲

>「さかなとり」ベトナム民謡

>「綿摘み歌」アメリカ民謡

他にも何曲も歌っていますが…。


歌う、そのこと自体でこどもが育っていく。

そんな歌曲たちを手渡していきたいと思っております(だ)


ひだまり保育園*安藝里山保育

広島市の東の端っこ 矢野 にある 認可外私立保育園です。 民家を利用して、 40人程度の小集団で暮らしています。

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